凡庸雑記「ヤマザキマリ」





エッセイ好きの僕は、何か面白いものはないかと、常々気に留めている。

Amazon で新しくkindle Paperwhiteを買って、kindleunlimitedが3ヶ月99円で使用できると、ポップアップが目の前に現れたので、せっかくだからとそれも購読申し込み、日々、面白い本を探している。

もちろん無数の本の中から、エッセイを選ぶのは至極当たり前のこと。この中から最近、ヤマザキマリ氏の「男子観察録」を選び読んだ。

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今まで出会った印象的な男性を、鋭い洞察力と客観的な目線で書いている。あの、極上の不可思議コメディである「テルマ・エロマエ」の作家だけあって、そこはかとないユーモアも香り、とても良いエッセイだった。

と、書きつつもなんだか無性に違和感を覚えた。

先ほど「テルマエ・ロマエ」だから、ユーモア、コメディなんて言葉を書いたが、どうもその視点で読み進むと、何か違うものに身体中が引っかかる。

変な表現だが、自分の予想を遥かに超えた、真っ当でしっかりとした文章なのだ。

本能的に生まれ持った洞察力や観察眼が優れている。それだけでなく、とても強くしっかりとした文化的な背景が見えてくる。だから、流行りの漫画家が知名度と平凡な日本人が味わえない経験をネタに、面白おかしく書いた。と、軽薄に読むと違う何かに当たってしまう。

的確な言葉の選び方、文化的な正当性がある文章の組み立て、それらを土台として。その上で、辛酸を舐めた人生の悲哀と、否が応でも関わり合う冷男という生き物に対する冷静な観察。そして、持って生まれた楽観な言葉運びがトッピングされ、ピザのように味わい深く、刺激的なエッセイとなっている。

特に印象に残ったのは、イタリアの老小説家と移民の兄弟が運営する画廊の話。貧困の中で救いのない終わり方をする。だけど、そこに信念を持って、芸術を愛し育んできた、偉大な選択の軌跡を見ることができる。

エッセイの一章だから、短く、簡潔だが、長大な歴史映画を観たような気分に浸ることができた。本当に、この物語を一編の映画にして欲しいと心から思う。

ここまで、文章を書けたのなら、ヤマザキマリ氏は漫画家ではなく、文筆家か小説家で名を成した方が良かったのではないか。軽率で人の目を惹きつけるような表題ではなく、率直に人の生き方を問うような表題を持って、僕たちの前に現れていたなら、また違った美と生への感動を得たかもしれない。

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