凡庸写真雑記「書店街」

神田書店街に行く。

さほど広くない場所に、本屋が所狭しと数軒並び、ほのかな知性の香りが漂う、大好きな場所だ。

今日も、心地よい知性の香りを堪能しようと、心弾ませ、書店街に足を踏み入れた。瞬間、喜びは消え失せて、愕然としてしまった。

それは、完璧に事件だった!

いつもの、いくつもの本屋が消え失せていたのだ。

身を震わせて立ちすくみ、神田お前もか!と、ブルータスに刺されたカエサルの如く、心の中で絶叫する。

確かここは、あそこはと、本屋が入っていたはずの場所に目線を移す。そこには、似ても似つかない店々が入っていた。書店街のその名を表す本屋が、見る影もなく消え行こうとしていた。

あゝ、ここにも文明の波が訪れていたのかと、落胆し悲しんだ。

心なしか、というか実際、人がまばら。平日だからか、本屋が少なくなったからか。これは平日の昼前だからと、願いたい。

ふと目をやると、書店街の入り口に堂々と建っていた、商店街の顔と言える、三省堂書店までシャッターが閉まっていた。

いつもは人がごった返していたかの店までも、潰えたのかと思いきや、改装中で6月1日に再出店するとのこと、胸を撫で下ろし願わくば永遠に続くことを心で祈る。

嬉しく、安堵したのは、行きつけの本屋がしっかりと営業していたことだった。

ビル一棟全て入っているレストランと併用している書店。気に入っている点は、販売されている本の質が高く、濃くて深い。派手さや、流行りのを狙わず、知的な好奇心を掻き立てる厳選された本ばかりを販売している。

また、さほど大きくないのもいい。ちょうど良い広さは歩き回るのに都合が良く、濃厚な本の森の中を、吟味しながら散策するのに適している。

訪れる客も、紳士淑女的雰囲気の人が多く、静かな店内を阻害せず、それぞれがゆったりと本を愛でる環境を育んでいる。

その中、何度も店内を上下左右に往復し、何時間でも居てしまう。いつもは、時間僅かな昼休みのみなので、名残惜しさに身悶えしつつ、店を出ている。が、今日は、少しばかり時間があったので、小一時間ゆったり店内を巡る。

実は、これだけ贔屓にしているのに、本屋の名前が思い出せない。まったくもって覚えがない。

こうして、枯れゆく本屋を名残惜しんで、思いを書き綴って入るのだが、月に年に何冊かを本屋で買うのかといえば、裏切り者のそしりを甘んじて受けなければならない。

月に一冊といかなくとも、年に一二冊は紙の本を、街角の本屋で買わなくてはとささやかな決意を胸に、少し寂しくなったかもしれない神田の街を後にするのだった。

と、言うことで久しぶりに神田の古本街を訪れたら、小さな古本屋は根強く残っていのだけど、少し大きめの本屋がかなり減っていた。大型書店の経営はとんでもなく大変なんだろうなあと、しみじみ感じる。

東京の中心的な場所で、こうも本屋が潰れてしまうのだから深刻としか言えない。

なんとかない金を振り絞って、微々たることだけど年に何冊か買わなくちゃと思った次第。

ちなみに撮影したカメラは、机の中で眠っていたキヤノンのコンデジ。S110だったか?かなり古い機種で、ちゃんと写るかと試してみた。

写ることは写ったけど、ぼんやりフォーカスがかかった写真。味として目をつぶることもできるけど、最近のスッキリクッキリ写るカメラと比べると、あまりにも残念。ちょっと、使えない。

でも、スナップは小ささが正義だとも実感。撮る時の抵抗がミラーレスに比べて、圧倒的に少ない。人に対しても気後れせずに撮ることができる。俄然、リコーGRが欲しくなってしまった。

Nikon Z6を手放すことはもちろんしないけど、スナップ用としてGR一台あれば、世界が金色に輝くだろうなあ、と、良からぬ欲望にまみれた、今日だった。

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