正月早々「すずめの戸締り」を観る。結果満足。ネタバレなく感想を。

あまり観るつもりはなかったけれど

新海誠の新作「すずめの戸締り」はあんまり観るつもりはなかったけれど、妻が面白とどこから聞いて来たようで、珍しく観たいと言ってきた。

映画を観たいというなら、止める必要はない。僕は映画を大好きだけど、妻はさほど興味がない。だから、いつもは僕は観たいと言っても、そんなもんに金を使う価値はないとけんもほろろに拒絶されるので、一人げこっそり観に行くことが多い。

それが、よほど興味を持ったようで、今回は家族全員で正月のイベントとして観に行くことになった。

結果、満足。新海監督の腕を実感

「天気の子」があまりしっくりこなかったので、あんまり期待すると肩透かしを食らうかもしれない。余計な期待は持たずに、気楽に楽しむつもりでスクリーンの前に座った。

結果、感想としては、十分満足いく内容で、結構長い上映時間を存分に楽しむことができた。

アクションとドラマのバランスがとても良い。新海監督、かなり腕を上げたなあ。そう感じる。責任感のある作品を創る中、演出者としての技量を毎回高めている。

アニメ映画作家としての、技術的な部分を疎かにせず、実直に考えノウハウを積み上げている。そう、感じた。

アクションシーンでの、コマ割り、切り替え、速度、全てが絶妙なタイミングで、観ていてこれは!と唸った。匠の技とはこういうことだ。と、思った。

賛否両論の物語も、変に理解不能な方向に傾かず、さりとて、内容が内容だけあって、御涙頂戴の人情ものでヘキヘキするなんてこともない、これもギリギリのところで平均を保っている。

愛らしい登場人物の存在感

基本的には、主人公の過去のトラウマの克服と、人間的成長、そして、愛の物語。それに、新海監督特有の美しい映像と、甘い人物デザイン。観ずにこれだけを眺めていたなら、観る気などしなかったが、実際、観ると良い意味で裏切られる。ストーリーのうまさに舌を巻く。

主人公を含め、登場する人々がとても優しく、愛らしく、人間らしく、僕は愛したし、感情を添わすことができた。確かにこんな都合の良い、人ばかりは世の中にはいないだろうけど、それでも、この世界の中では存在しているのだと、思えた。

これも、不思議なんだが、こんな鳴門金時みたいな愛すべき甘い人々は、生来、虫唾が走ると言ってしまったらおしまいだけど、ちっと、ハスに構えて敬遠してしまいやすい。それが、素直に受け入れられた、こんな僕が。

滑稽な姿と愛らしい主人公ゆえに

そして、これは今考えると、素晴らしい人物設定だとつくづく思えるのだけど、主人公が愛するもう一人の主人公。戸締り屋のお兄ちゃん。それこそ最近では少なくなった、超がつくほどのイケメン。

背が高く、黒髪が肩まであり、鼻筋は通り、言葉はまろやか。そういえば、主人公の女の子、坂でばったり会った瞬間。ドキッと惚れちゃうのだから、そんな、下手な上女漫画見たいな展開なんてあるんかいなと、その時は、心で少し憤慨した。

まあ、単純に一目惚れじゃなかった問いのは、おいおい進むにつれてわかるのだけど。

そのお兄ちゃん。物語そうそうとんでもないものに変えられてしまう。そこからは、声はイケメン。見た目は滑稽。なんてことになる。そう、美女と野獣になるのだ。

そう、ここがよかった。ここからがよかった。物語全てに、この空想の世界に息をしているようなイケメンと、可愛い絵柄の主人公のイチャイチャを見せられながら進むのは、なんとも胸が焼けてしょうがない。そう、腹だたしい。

あの滑稽な姿に変わり、主人公と旅をして、命懸けの「戸締り」をしていく姿が、その、滑稽と悲壮な現実の世界に、素直に集中できた。観ている時はあまり思わなかったけれど、今考えるにこれがあったからこそ、ブ男で凡庸な僕が、最後の最後まで満足して観ることができたし、イケメンに戻った時に素直に、よかったと胸を撫で下ろすことができた。

やはり、イケメンには苦境が似合うという、脚本の妙をいい塩梅で貫いていて気持ちがいい。決して、ヒガミなどではなく…………..?

古今東西、ちょっと不細工系の監督は、イケメンの使い方をよくわかっている。あっ、すいません。あくまでも僕の憶測。

賛否はあるが、楽しんで観ても得るものが多い

もちろん、この作品。かなり、賛否両論なのは知っている。隅を突けば、そして、あからさまな悲劇を描いているので、配慮とか思いやりとか、実被害の人への影響とか、ありとあらゆることが引っかかってくるやもしれない。

それに、新海監督の独特の世界観に合わずに生きている人もいるだろう。意外に僕もそうだった。だから、初期の作品はちょっと観るのがきつかった。

そんなことを考えても、この作品は楽しめるエンターテインメントだし、まずは、小難しいことは考えずに、素になって楽しむことが必要だと思う。そして、楽しめるとても巧い作品だった。

こんな感じ。最近観たアニメや実写の映画の中でも、満足度はとても高い作品。余裕があればもう一回か二回観てもいいかなと思っている。

編集や演出基本的な演出の技量実感

個人的には、編集の巧さが格段に上がったと感じた。場面展開のタイミングを楽しむだけでもいいのではと思う。ここで、この場面が来る!こう来て欲しい!と感じた瞬間、スパッと来るのだからとても心地いい。

北野武なんかは、編集の時に何秒で場面を変えると、はかりながら編集を行なっている。新海監督も、頭のいい人だから、そこは数値的に考えて編集を詰めていっているのかもしれない。

次の作品が楽しみだ。と、普通ならば締めくくるのだけど、少しばかり新海監督作品は合わないところもあるので、次、そそくさと観にいくことはない。たけど、演出者としての腕はピカイチなので、評判がよかったら観にいくつもり。なんだか、偉そうだけど。

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