凡庸”日本ドラマ”雑記「カルテット」

Netflixで「ファーストラブ」や「今際の国のアリス」を観て日本ドラマにハマっている今日この頃。次は何を観ようかなと物色していたら、またもやNetflixで配信されている「カルテット」に目が留まった。

確か、結構前に評判になったのではないかと、見始める。

メインの俳優たちが実に豪華。今では、それぞれが主演クラス。演技も個性も一流の役者たちが、見事に個性を出し合って、”カルテット”を奏でている。

主演的な立場として、松たか子。そこに、この間「ファースト・ラブ」で魅了されたばかりの満島ひかり。そして、引いた演技が絶品の松田龍平。彼らを俯瞰して三枚目に徹しているのは、個性的で固有な存在香る高橋一生。

それだけじゃ飽き足らず、一癖、二癖ある役者が、彼らを取り囲む。どっかで観た顔だなあと思って、優男を眺めていたら、なんと、脚本家として今や超一流の名を欲しいままにしているクドカンこと、宮藤官九郎。すっごい情けない男なんだけど、すっごく優しくマガママな旦那を見事演じていた。

こんな、強烈な個性を持った役者をかき集めただけであって、脚本がとんでもなく、飛んでいる。

数秒ごとに、小洒落た駄洒落の台詞が飛び出し、物語が飛び跳ねる。曲がり、くねる。で、ここで危険なのが、このまま朗らかに名優たちのお笑いで心地よく進むのかと思いきや、なんと、いろんな深刻な現実を染み込ませてくる。

お笑いの表皮を削り、冷静に見つめ考えると、洒落にならないほどの、”深刻”と”悲劇”がひょこり出てくる。

それも、一つの問題だけで、数話のドラマや数時間の映画になるだろう内容を、いろんな角度と質量で織り込んでくる。この描き方が本当に見事で、柔らかな毛布のような物語の中身に差し込まれた針のように、油断して身を任せるとグサリとくるから恐ろしや。

才能の問題も扱っているが、どれほど愛して、努力しても、才能のカケラがなければ、世の中に認められることはない。

この物語の4人の演奏者は、才能のカケラがはっきりと無い。

通常は、過去は名声があって、今は落ち目とか。実は、才能が満ち満ちているが、世の中の呪いによって、塞がれている。なんて、悲しい天才物語が多いのだけど、ここでの四人は音楽の才能が無い。

音楽のコーディネーターが彼らを評して、3流と言う。そして、音楽を愛し、よりよくなるために努力する彼らを見、再び言う。努力する3流は4流であると。

それに、最後、彼らの演奏のことを辛辣に評した手紙が届く。なぜ?あなたたちは未来も目処も無いのに、こうして、音楽を続けていくのかと。

でも、彼らは、音楽をどうしようもなく愛していることは間違いなく、人知れず努力を続け、社会人としての生活を捨て、音楽を続けるキリギリスになる決意をする。それで終わる。将来は暗澹たるものだ。それでも、進んでいく。

その辛辣な人生観がとても面白い。

また、洒落にならないほどの問いが盛り込まれる。いったい彼女は殺したのか?と言う問いが。

中心たる松たか子が演じる人が(役名は忘れてしまった)実は、全く見ず知らずの人になりすましていたことが分かる。それは、とても不幸な環境から逃げるため。そして、逃げるちょうどその時に、父親が亡くなる。

一見すると、松たか子だから、主演だから、美人だから、柔らかな笑顔だから、殺しという言葉が全く似つかわしくない。だけど、それがもどかしくもはっきりしない。なんたって、松たか子の柔らかくとも、奥に固い塊を感じる表情が、悔しくとも見事なのだ。

僕としては、きっと、やっちゃったんだろうなあと推測している。「死と乙女」だからね。

それから、満島ひかりはやっぱりいい。

何か、一歩、相手に対して接する時の、一段のめり込んだ演技は、お見事。狂気すら感じる目線に、ただものじゃないと、感じる。

こんな感じだろうか。まだまだたくさん良いところがあるが、終わりそうもないので、書く時間も限られているので、こんな感じかな。もちろん、松田龍平や高橋一生もすっぱらしい。特に、好きなのが松田龍平の引いだ凡人の演技。ほんと、おもろい。(そればっかり、ボキャプラリ無し!)

時々、日本の演出はこんなもんがある。こんなもんというのは、声高にあからさまに人の気持ちを噴出するような、現実を赤裸々に引き出すような、韓流ドラマのような?演出はせず、一見、朗らかで笑わせる、もしくは、静かに佇むような演出をする。

最恐の恐怖映画として認識している「東京物語」の小津安二郎や、労働者階級の悲哀、立て万国の労働者諸君的精神の「男はつらいよ、フーテンのとらさん」の山田洋次などなど、直線じゃないくて、完全に真逆の仮面を装って、徹底的に打ちのめす作品がある。

これらが持つ、奥ゆかしさや、謙虚さ、冷静さやユーモアを、完全に継続した作品である。そう、観ながらしみじみ感じ、ほくそ笑んだのであった。

もっと書きたいけれど、めんどくさくなったので、この辺で。まだの人は是非とも観てくだされ。Netflixに入っているならば。日本ドラマも捨てたもんじゃない。

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