この間、Netflixで前から興味があった、「音楽」を観た。
音楽を観た
とても評判が良くて、いろんなところで噂になっていたアニメ映画。近いうちにAppleあたりでレンタルして、観てみようと思っていたら、いつの間にやらNetflixで配信されていた。
これ幸いと、iPadにダウンロードして、一気に観たのだった。
で、拙い感想を書かなければならないのが、どうにも苦痛で仕方がない。とにかく何か鑑賞し心が干渉した場合は、感想を述べなくてならない。(別に義務はないんやけど、かえって迷惑)
これは、小学校からの習わしである。本を読んだら読書感想文。偉い人のお話を聞いたら、お話感想文、映画を見たら鑑賞感想文。などなど、自分が感じたことを”おもろかった”と”おもろうなかった”の二つだけの明瞭簡潔な言葉では世間様は許してはくれない。
そこで、今から忌憚なく、感じたことを、簡潔、明瞭に述べていく。可能であれば。
結論として”おもろかった”
結論として、”おもろかった”なんで?と言われると、言葉に窮するのだけど、人をおちょくっているような、絵柄と演技これが、もう、感動する基準の意外性と、必然性と、感性の賜物で、物語に違和感なく引きずり込まれた。
これでもかと、拙さを表に出した絵柄なんだけど、これが物語を雄弁に語っている、絶妙な具合。それがいい。実にいい。
それに、実写ではできそうもない、アニメだからこそ自由にできる、心象、抽象的場面の盛り込み方が、演出者の無類なる力量を感じて、おもろかった。
台詞回しもこの塩梅もいい具合で、放送事故か?と、思えるほどの間があって、その間、動かない表情(ほんまに絵が動かんのよ)を、延々見せられて、だからこそ期待と、笑いが胸の中に広がる。
常設に、猛スピードでセリフをたたみかける、数限りなくあるアニメとは、全く、真逆の演出。この監督はアニメとは畑違いの人なのだろうか。いい意味で毒されていないというか、既定路線を逸脱している。
意表を突かれた設定
それから、”おもろかった”理由は何があったんやろう。ちょっと待って、今考える。
そうそう、物語の設定というか、主人公の人となりというか、これも意表をつかれた。
普通の青春、それも、「音楽」ってついているもんを描くんやったなら、普通は楽器を手にして、バンドを組んで、仲間とやろうコンテストに出ようなんていうなら、楽器を朝から晩までひたすら練習して、それこそロッキー(わかるかなあボクサーの映画)みたくどんどん上手く成長して、よっしゃ、と近くにいる片思いの女の子の声援を受けて、大円団なんてことになるのだけど、それとは違うというか、そんな感動は狙っていない。
練習と言ったって、ひたすら叩いて、弾いているだけ、楽譜やコードも何もなし。ただ、どこどこやっているだけ。でも、それでもみょうに感動するのが、不思議な面白さ。
アニメの中でも、音楽仲間が演奏を聴いて、とにかく感動して夢の世界に飛んでいた。
そして、最後のフェスの時には、予想外のあれ?ってことになるから、観てのお楽しみ。ここの盛り上がりと、持って行き方は、膝を叩いて喜んだ。
世の中甘いもんじゃありまへん
映画は、十分満足して、ええもん観たなあと思えたんやけど、どうも複雑な気持ちにもなった。
やっぱり、世の中ってもんは、ヤンキーというか、ゴツくて悪くて人をなんとも思わん人間が、成功するんかも知れへんなあ。と、観ながら思っていた。
青春映画やアニメなんかで、すごく気が小さく、オタクで、クラスの誰からも無視されるような、おとなしめが、実は密かに才能を蓄えていて、それが、クラスの一番の美少女に見染められ、気弱な気持ちを引っ張り上げられ、世界に才能を開花させる。希望と冒険の物語。
実際は、世にも凶暴で恐ろしく、全力で力づくで潰しにこようとする、凶悪な存在と真正面から衝突して、自分で才能を切り開かなくてはならない。のではないか。
前にも書いたけど、「覚悟」がなくて、それに見合う内外の度量がないと、普通じゃない才能は世の中から突き破って、非凡な結果を残せない。
音楽をやろうとしても、写真にしても、小説にしても、はたまた何か創造的な結果を形にしようとしても、正式な手順の前後左右には、過程となる状況なり、人物なりが両手を広げて、とうせんぼをしている。
彼らと、対等に立ち向かい、道を開くためには、常識や現実や暴力に屈しない、強さと無邪気さ、そして、同じ暴力が必要になる。
よく成功者が、テレビや雑誌取り上げられているけど、やっぱり、こりゃ普通じゃないわなあ、気の小さいもんには、ちょっと近づきにはなりたくないなあと、思える人間が多い。
自分で言うのはなんだけど、人一倍気の小さい僕は、創作への想いはあったのだけど、世の中にそれを問い、夢を成し遂げるには、あまりにも勇気と暴力が足りないと、自ら尻込みしてしまったのだ。
いや、ほんまお恥ずかしい。
よくよく観るとよくできている
と言うことで、これでだいたい感想と言えるもんは書けただろうか。本当に、感想を書くのは難しい。いろいろと頭の中に思い浮かぶのだけど、どうにも、言葉の断片をつなぎ合わせるのが、うまい具合に行かない。
でも、これも表現の練習として、時々、気まぐれで書いてみるつもり。それでは。
あっ、それから絵が拙いとか、音楽が凝ってないなんてことを、みたいなことを、書いたけど、よくよく思い返すと、ズゴイ凝っていて、良いもんだった。あえて、凄さを感じさせないのが、この演出者のすごいところに違いない。