「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」
この映画を観たので、ちょっと、雑記。

アカデミー賞を取ったので取りあえず観てみましたって
感じで観た。

アカデミー賞は万人の為の賞では無く、アカデミー会員
の趣向で決まるのは、町山智宏氏のラジオでよくよく聞
いていた。

だから、自分は楽しめないと、期待せずに観ていたが、
案の定、僕の心には響いてこず、同調しないまま終わった。

もちろん、これでこの映画の善し悪しを語れるわけでも
無く、この映画で出てくる、崖っぷちに立たされた創作
者としての経験が多少なりともある人なら、感涙にむせぶ
こと間違いない。たぶん。

脚本も練りに練られているし、長回しのカメラワークは
最高に素敵だ。それに、超有名どころの役者が、オーラ
皆無で自然に演技しているから、場末のブロードウェイ
の雰囲気がムンムンである。

途中で、あれ!?彼女ナオミ・ワッツ。
あの真面目に振り回されているマネージャー、ザック・
ガリフィアナキスだって。
さすがに、エドワード・ノートンは分かったけど、地味
だったけど。
てな具合だ。
ただ、最近躍進のエマ・ストーンは輝いていた。

さて、心苦しいのは、こうやって、響かなかった、華が無か
ったなんて、年に数本しか映画を観ず、演劇など生まれて
この方観たこともない僕が、勝手気ままに書き殴っている
ことだ。自分で書いていて狂っていると思う。

映画の中で、起死回生のために、ブロードウェイで、
レーモンド・カーバーの重ったるい演劇を渾身の思いで
やるのだが、失笑しか生まない事件の連続で、心身とも
やつれていく主人公の創作者としての煉獄を幾度も見せ
られる。

まさに三流喜劇の様相なのだ。だけど、そこには笑えない
苦しみがある。個人的にはいっそ笑い飛ばしてしまえる
軽さがあれば、もう少し好きになれたのにと思った。

切羽詰まった主人公が、共演者の悪癖に地団駄踏んだり、
超有名な評論家の侮蔑に対して、とうとうと思いを語ったり、
真摯に表現者にならんとして苦闘している姿を見せられると
人が創ったものを、良かった、悪かったとは簡単には言え
ないなあと、躊躇してしまう。

この映画も、お金を損したな。なんて、“仮に”思ったと
しても、がんばったんだろうなあと、拍手の一つでもしなく
ては、そんな義務感を視聴者は持つべきなんだと、
創造者、表現者に対する憐憫の情を湧き上がらせた作品
だった。その点がこの作品の意味なのだ。(絶対!そうじゃ
ないのは当たり前だけど)

あっ!それと、最後まで幻想、妄想なのか、ほんとにあんな
ことが出来るのか。なんとも現実の中に、非現実を盛り込む
演出は、心憎かった。ここは、ちょっとメモ。記憶の僻地に
記録しておこう。