天才が天才を演じた忘れ難き映画「響」

創作品というのは、明確な答えがなくて人それぞれの主観で好き嫌いが分かれてしまう。

大多数の人が素晴らしいと褒めていても、自分にとっては今ひとつしっくりこなかったり、さほど見向きもされない作品が、人生を変えるほどの感動を与えてくれる。

「響」がNetflixで配信されていたので観ました。映画館でも見たのでこれで二度目。この作品人生を変えたなどと大袈裟なものじゃないけど。

僕にとっては忘れがたい作品です。

もう一度観なくてはと思っていたので、Netflixに入っていて本当によかった。うれしくて仕方ありません。

この作品が発表された時には、また少し人気の出たアイドルを使った、よくある軽いアイドル映画だと、苦々しく感じました。アイドルは全く興味がなく、話題作りのために演技未経験のアイドルを使うことなど、映画好きとしては苦言の一つや二つスクリーンに投げ掛けたかった。

だけど、巷では主人公の響を演じる「平手友梨奈」なるアイドルが、爆発的に人気がある。疎い僕にも聞こえてきました。

どんなもんやろう?とYouTubeで調べてみると、彼女がいるアイドルグループ「欅坂46」が現れた。興味本位で再生したら彼女の存在感にびっくり。彼女の鬼気迫る表現に肝を潰してしまいました。

これは、映画を観なくては!その瞬間映画での彼女をどうしても確かめたくなったのです。

映画の中の彼女は、「響」としか言えず、演技とは違う場所で存在しています。これは故意な演技なのか、それともただそこにいるだけなのか。一瞬も不確かな素人の顔を見せず、後半に向かい緊張感を引きづりながら真摯に進んでいました。

天才であり、主人公。演技の巧拙ではない存在の圧倒的な価値を見ることができたうれしさを愉しみました。

奇しくも、物語の中の「響」は若く経験も無い小説家。だけど、読んだ後誰もが天才として感じざるをえない。まったく、彼女は同じでした。

アイドルで若く、多くの名優たちに囲まれて、よくもまあこんな厚顔無恥な演技をやり切れたのか、驚くしかありません。

それに、彼女の圧倒的な姿を、みごとに照らし出した脇役たちの存在も忘れられない。

脇役といっても、通常の映画では主演を取る経験も実績もある名優たち。

翻弄される編集者を、引きの演技で徹して自身の位置をずらさず受け止める北川景子に、親しみを覚え、彼女が好きになりました。

希望を摘み取られた小説家を演じた小栗旬の死んだ目も、白眉。

他の人間を愚弄するしか、自身の価値を認められない小説家を演じた柳楽優弥。傲慢の小心が混ざり合った演技は、少ない登場ながら心に残る。

特に、気を引かれたのがライバルと言うか友人なのか。同じ学校の文芸部部長を演じる、アヤカ・ウィルソン。

平出の岩のような硬く崩れようも無い重い演技に対し、水のように柔らかく、冷たく、流れる演技が対局を成し、物語に陰陽の深みを描く。この子、こんなにできる子だったんだ。と、これまたうれしい発見です。

とにかく、表情が豊か。目線や口元それを流れのように変化させて、言葉と裏腹の本音を語らせます。

この映画のよかったところ、自分にとって感情を刺激させられたところは役者の演技以外にも色々とあります。

物語が音楽のように流れる演出や編集が気に入ったのも一つ。この監督音楽のセンスがある。とても、映画が心地よく、最後まで気持ちよく流されて行きます。

もっと簡単に、自分の感動というか、おもしろかったと感じた内容を書きたいのですが、いつものことで上手い具合にまとまりません。

この映画が自分中で大成功だったこと、平手友理奈はただただ素晴らしかった。脇を固める俳優の底力を知ることができた。この映画は一つのアイドル映画として、映画史から忘れられるかもしれませんが、自分にとってはこれからも何度か思い出し、見直す作品だと言うことをお伝えし、終わります。

蛇足ですが、平出友理奈さん。これからも俳優として素晴らしい作品に出てほしいし、観てみたい。でも、天才故に僕たちが思うような形にはならないかもしれません。これが最初で最後にはならないとは思いたく無いのですが、「響」の様な彼女。安定とは程遠く、精神の危うさと、自我の強さ、美意識の高さ故に、寡作になるかもしれません。

でも、数は少なくても、屈強な演出者と二人三脚を組んで、忘れがたい作品を出して欲しいと思うのです。

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