不死鳥のように蘇った暁には、どんな歓喜の歌が響くのか。「ミラノ・スカラ座 魅惑の神殿」を観て。
休みの日は動画三昧
今日は仕事を休んで家で監禁。そんな時家でやることは大抵これしかない。ひたすら映画やアニメを観まくって過ごします。
今日は今期最大の期待作「イエスタディをうたって」が配信されたし、そのその後、これまた大の期待作「かぐや様は告らせたい？二期」が届けられる。
時間はたっぷりある。これを観なくて如何しようか？と、この作品を堪能し、お腹が一杯になったのです。が、まだまだお天道様は空の上。今日は昨日と違って暑いぐらいに陽が眩しい。さりとて、大好きなショッピングモールや映画館はダメ。
さすれば、もっと観てやらねばならない。と、動画配信サービスを物色。どんな物を今も僕は楽しむべきか、あれこれ考えを巡らせながら、行きついのはこれでした。
オペラの神殿スカラ座
Amazonプライム・ビデオで配信されていた「ミラノ・スカラ座 魅惑の神殿」
デカデカとマリア・カラスが写っていたので、伝説の歌姫カラスのドキュメンタリーだと見始めたら、カラスはちょっとだけで、ミラノ・スカラ座の成り立ちと、良さを描いた作品でした。
もちろんマリア・カラスも長いスカラ座の歴史を飾る一人として登場します。でも、ちょっと短かったのが残念。
それでも、作曲家ならプッチーニやベルディ。指揮者ならトスカニーニ、カラヤン、アバド、ムーティ等々もうクラシックの歴史を作った天才たちが綺羅星の如く。
スカラ座で上演されたオペラが要所で流れ、イタリア音楽の軽やかな調べに心が持っていかれそうになって、もう少しで天に召されてしまうところでした。
理解不能の性癖と唯一の体験
実は、前にも書いたことがあるかもしれないのだけど、ど田舎育ちの低学歴、低所得者のくせにクラシックが好きなんです。本当の恥ずかしい。赤面もの。一人の友人以外にはその秘部を見せてはいない。
オペラと言えば、一度劇場に見に行った事があります。尼崎の駅前のなんとかいうそれなりに大きなホール。演目はジュゼッペ・ヴェルディの「椿姫」フルオーケストラで、歌が全て日本語。今は亡くなった日本のマエストロ朝比奈隆氏が役していました。
日本語でオペラを鑑賞するだなんて、通の人からすれば、邪道も邪道かもしれませんが、おかげで内容が良くわかって、話にグッと感情移入することが出来ました。
演目が始まり、序曲がオーケストラピットから湧き上がり、会場全体を包んだ瞬間。観たこともない甘美な世界が広がったのでした。逃避と言えば下品な表現ですが、創作品、芸術品の目的の一部が、現実からの飛躍であり、日常では味わうことができない美しさに触れることだとすれば、オペラ以上にそれを味わえたものはありませんでした。
オペラに行ったのは、行けたのは、これっきりなので。いつの日か再びとは思っているのですが、結構高いし時間もない。夢は叶わないままです。
話しが余計な方向に行ってしまいました。
スカラ座の魅力を詳細に
このドキュメンタリー。スカラ座の創設者や関係者を寸劇で説明したり、歌手やダンサー、演奏者に関係者のインタビューがあったり、なかなか凝った演出です。
過去の話だけでなく、現在進行形のオペラの練習風景もあります。指揮をしているはダニエル・バレンボイム。びっくりするほどおじいちゃんになっていて、時代の流れを感じます。
僕が知っているのはピアニストの彼ですが、今や名実ともに指揮者として立っています。
もちろん、完成したオペラの全部は流されません。演奏されるオペラの序曲がエンドロールとして使われていました。
去年の今なら楽しいだけで終わったはず
素晴らしい歴史と実力を持つオペラ劇場「ミラノ・スカラ座」オペラの神殿として、守り支える人々の誇りと、喜びが溢れる素晴らしい作品でした。
と、締めくくりたかった。
来年の今なら、素晴らしいオペラの神殿として、無邪気に楽しめたと思います。が、今は素直に喜ぶことができない。
「ミラノ・スカラ座」が築いた素晴らしいオペラの歴史を通し、音楽芸術を紡いできた人々の明るく自信に満ちた歩みが、まるで鎮魂歌のように心に響きました。失われてしまったように。
必ずいつの日か歓喜の歌が響く
新型コロナウイルスの影響で、国全体が未曾有の危機を受けているイタリア。かの劇場もきっと、厳しい現状の中にあるでしょう。
が、芸術の炎を消さないように、戦っているはず。失われる事を否として、死地から何度でも蘇るフェニックスのようにして。第二次世界大戦中空襲を受け、破壊してしまったスカラ座。でも、終戦後ミラノ市民が真っ先に再建したのが、この劇場だったとのこと。
今回の病魔を克服した暁には、きっと、世界中から人々が集まり歓喜の歌が響くでしょう。その歌は何か？今から楽しみに考えてみたいと思います。
