「グリーンプック」を観て。音楽が生み出された世界。

人の世の中から悲しみは拭えないのかもしれない。悲しみは人の中から生まれる。人と人とが対すれば、差ができ、迫害と被迫害が生まれる。

その環境を変えたとしても、迫害者が被迫害者となり、再び同じことが繰り返される。この悲しい連鎖は消えないのだろうか。

この物語は、その中で美しさを放っている、音楽の物語だ。

僕はそう受け取った。

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避けがたい運命の中で、変えようもない中で、唯一の美しさを放っているのは、音楽だ。ピアノの前に座り、細く長い指を鍵盤に触れた瞬間。

抗しがたく美しい音楽が奏でられる。悲しみに満ちた人生の中から、光が生まれてくる瞬間を体感する。

もちろん、この物語は当時の世相を表現し、世の中に満ちている差別の醜さを描いている。それが、主題であることは間違いない。でも、あえてこれは音楽の誕生の物語だと信じたい。

どれほどの、醜さが世界にあふれていても、創作は絶えず美しさを求め逃走を繰り返すす。これほど、美しいものが世の中に溢れていると。それは、醜さを作り出す同じ人間から生まれたものだと。

皮肉で残念なことだが、明暗と、苦楽があまりにも激しく葛藤する間で、創作品は光を放つ。美しいままでは、美しく生まれない。そう、この映画。この物語を観ながらぼんやりと考えた。

政治的な、人種問題的な部分で、批判している人がいる映画だ。確かに、甘く、おざなりな部分もある。でも、それでこの映画を、この映画で語られる音楽を、視界の外に追いやるのは残念だ。

ただ、傍観者としての距離を取りながら、この映画の音楽に身を浸すだけでも、価値がある。そして、音楽が生み出された世界を堪能する。









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