
近しい似たもの同しの争いこそ悲しい「US (アス)」
前からとても観たかった「US (アス)」が Amazonプライムビデオで配信されていました。
Amazonプライムビデオの映画配信は、Netflixより良く、かなり質の良い映画を配信してくれる。自主制作ならばNetflixに軍配が上がるかもしれないが、上映された作品ならばAmazonの方がと思っています。
「US (アス)」アカデミー脚本賞を受賞した「ゲット・アウト」のジョーダン・ピール監督と、同映画の制作ジェイソン・ブラム氏が再びタッグを組んだホラー?スリラー?スプラッタ?の顔をしたシニカルな社会風刺の映画。
「ゲット・アウト」がホラーとしての顔でグイグイ見せながら、斜め目線の人種差別を滑り込ませる巧みさは見事だった。
この「US (アス)」も監督のシニカルな斜め目線が遺憾なく発揮された作品。
裕福な黒人家族が夏のひと時を過ごしていたら、謎の家族(?)に襲われる。それが、なんと自分たちと瓜二つ。不気味に微笑みながら襲ってくる彼ら、それに対抗する家族。息もつかせぬ展開にのめりこむ。
エンターテインメント作品として作り上げる監督の手腕は見事。
しかし、ことは単純じゃないのが、この監督の作品の面白さ。裕福な家族が得体の知れない存在からコテンパンにやられ、それを撃退していく気分爽快な勧善懲悪な物語、だけじゃない。
彼らがなぜ襲ってくるのか?その意味はいかに。冒頭から数々の隠喩や伏線が張り巡らせ、見るものを迷宮に誘い込む。あの女の子のように。
どうして、見つかった女の子は言葉が話せないのか。どうして、襲ってきた家族のうち母親(らしき)存在だけ、片言ながら言葉が話せたのか。なぜ、手錠に拘るのか。それに対する謎解きの面白さも加味されている。幾つもの張られた伏線が、最後にぴったり合わさって謎が解かれると、あっと驚く事が事実が待っている。これはお見事!
少し検索するとありとあらゆる考察が出てくる。名探偵気分で監督の悪戯を解き明かすのも楽しいが、単純にホラーとして楽しむのも悪くない。
それだけ良くできている映画。
この映画で無視できないのが、「格差」や「差別」。豊かに過ごしている人の下には、見えない豊かじゃない人がいる。これは世の中の常。豊かさの量が世の中にはあるようで、ちょうど良いバランスにはならない。
損しているとか得しているとか比較がわかりやすくなると、憎しみが高まり悲劇が起きる。彼らの豊かさと我らの惨めさは、ほんの些細の違いの結果だと知る。
だからこそ、民族問題は近しい関係ほど、深刻になる。
古今東西、隣の国だったり、同じ地域の、一見とても似ている違う民族同しの紛争が多い。一度起きると延々と恨みは止まらない。
この映画で描かれているが、豊かな側に自分もなれたかも知れない、惨めで苦しい立場を、送る必要はなかったかも知れないと、近い分だけ似ている分だけ強く感じるのかも知れない。
圧倒的な格差があれば、諦めようもあるし、別の世界のこととして苦渋を受け止める事ができる。しかし、自分と同じ存在が豊かな生活をしている。少しの偶然と運でその立場を得ている。そう感じると、なんとしても立場を変えようとする気持ちが噴出する。
そこで、守る側と奪う側の果てしない争いが起きる。
この映画を観ながら、なんだかこんなことを考えさせられました。
それにしても、Amazonプライムビデオはほんと素晴らしい。Amazonプライムに申し込んだらいろんなサービスもついてきて、さほど高くない。それなのに、映画のコンテンツが豊富だし質が高い。
劇場公開していた名作、秀作がどんどん出てくる。これは、映画好きとしてはたまりません。これからどんな作品が出てくるのか楽しみです。
ちなみに、「ハドソン川の奇跡」が配信されていたので、今度はそれを観るつもりです。