「プロジェクト・ヘイル・メアリー」無邪気な希望への協力
読後雑記※あくまでも読んだ後の衝動的な走り書き。
清々しい物語。
互いに助け協力し合い問題を解決して生きる。希望の未来を築く甘くて心地よい物語。
創作も現実も、殺し合いと憎しみ合いが当たり前の陰惨な世界に、こんな、夢見心地で心強い希望と救いの物語を考えられたものだ。と、感心した。
この作品を評して、ある人が甘くつまらない、中国の「三体」と比べるのもおこがましいと語っていた。
そうかもしれない。その通りだ。ただ、異星の存在と大いなる苦境を知性と科学で乗り切る様は、知的興奮を覚え(実際はほとんど理解不能だったが)本当に清々しく素晴らしい気持ちにさせる。世界の数多くの国々、民族、人々の中でこのような空想があってもいいと思う。
一体作者はどんな生き方をしていたのか、世界に対してどんな希望を持っているのか、天井知らずの彼の明るさに胸を打つ。
皮肉屋で陰惨な方へ傾きそうな僕としては、このような集まって協力して、難問を超えて、みんながハッピーなんて世界は、普通ならやめておくれとなるのだが、この物語に関しては、どうも当てはまらさそうだ。
対立し、憎しみ合う物語は世の中に無数にある。だから、この物語はこの物語だけは、そんな世の中の常識から外れ、無著に知恵と協力が織りなす、冒険譚を楽しみたいと、悲観的で皮肉屋の僕の心を素直にあきらめさせる、明るさがある。
上下巻で結構長い物語。その上、理解不能の化学用語も多数出てくるが、その苦労を超えて読む価値のある本には間違いない。