凡庸”岡田麿里”雑記「さよならの朝に約束の花をかざろう」

普通におもしろかった。拍子抜けするぐらいに。

「アリスとテレスのまぼろし工事」で、盛大に混乱させられたので、良い感じで力を抜いて見たら,これが、なんだか普通にしっかりと楽しめた。

岡田麿里監督脚本。癖の強さに身構えたが、普通に撮れるじゃないの。と、失礼極まりない感想を持った。

そういえば、この作品を見てMAPPAの社長がいたく感動し、是非ともと岡田麿里氏に作品作りを依頼したようだ。

永遠の命を持つ少女と、老さらばえて死ぬ定めの人間。偶然の出会い。家族として生きようとする中での、葛藤。最後は、育てた子が老いて死ぬ様を見送る。

話の運び方は素直に流れてとても見やすい。人物や風景は、絵画やイラストのような柔らかさを持って個人的には好きだ。

ただ、その一見柔らかな風景の中に、岡田麿里節と言うのか、人間の業が垣間見えて、物語に深い傷を残す。たおやかな絵の中に、強烈な人の怒哀を入れ込みことで、全体に叶わぬ悲劇を織り込む。

お仕事系アニメの多いP.A.works。おちゃらけた内容にそぐわない絵で油断させながら、しっかり考えさせられるアニメを作る。「スキップとローファー」なんてその真骨頂だった。

岡田麿里が描いてしまう、常軌を逸した人間の業を、ちょうどよくP.A.worksの絵が包み込んで、口当たりの良い作品にしていると感じた。

幼馴染の女の子の強烈な嫉妬や。主人公が執拗に母になろうとする強烈な感情の吐露。青年期になってから外見が変わらない母に対する複雑な愛。

長命の一族の血を入れて、同じ能力を手に入れようとした王が、無理やり王子と結ばせて、子供を産ませた主人公の友達の、強烈な母としての、母になろうとする欲求、切望は狂気を軽くはらむぐらいの感情だった。

この物語では”母”としての存在の有り様が、強く克明に描かれていて、興味深かった。

肉親の特に母親に求める心のひだを、ここまで赤裸々に吐き出す岡田麿里氏の凄さに感心し、いつもいつも驚かさせる。自伝で実の母親といろいろあったらしい。その時に取り込んだ心の業を、創作の骨格にしているのだろう。

この作品。結構評判が良かったので、前々から見たいと思っていた。でも、なんだろうか、レンタル代が結構高い。普通500円ぐらいなのに、確か、800円以上したはず。

大したことではないが、どうにも踏ん切りがつかなくて、今まで見ることは叶わなかった。それが、気がついたらNetflixで配信されていたので、ようやくご対面となった。

結果、とても楽しめた。良い作品だった。

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