「ファウンダー」を観て

マクドナルドを全世界に広めた人物レイ・クロックの物語。よくも悪くと時代を変えるような天才とはこのような人間だと、改めて思い知らされました。

世の中に才能はあふれています。また、人格も愛情も高い人間も多々いる。だけど、最終的に爆発的な成功を得る人はごく限られています。

成功を、あえて選択しない意味があることを教えてくれます。

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観ながら感じたのですが、この監督。結果的に全てを失うマクドナルド兄弟と、すべてをもぎ取り成功を得るレイ・クロックの姿を平坦に描いています。

どちらに偏ることなく、徹底して客観的な視点で、両者の姿を描き切ります。この演出はとても素晴らしい。

ドラマティックに物語を盛り上げるのなら、これ以上ないほどの悪役としてレイ・クロックを描き、声高に成功するためにあらゆる悪行に嬉々として手を染める姿を描く反面、

それと対比して、誠実にものつくりを行なっていたマクドナルドが、理不尽な要求により、全てを失う姿に意図的に落差をつける方が、より明確に強く感情が動きます。

しかし、それぞれの事情、心情を描きながらも、絶対ある一線からは踏み込まない、潔さが感じられます。

この抑制の効いた演出はとても好きです。

そのおかげでしょうか。それぞれの立場が偏ることなく、理解できます。自身が苦労して作り上げたノウハウとしっかりとした基盤。そして、目の前の顧客に対する真摯な姿勢を一瞬でも崩さないように頑なになるマクドナルド兄弟の姿。

人生最後に千載一遇のチャンスとして出会ったマクドナルドを基盤として、不遇の人生に終止符を打たんとするレイ・クロックの執念と焦燥。彼と同じ年齢ですから、実に身に染みます。

この年齢まで、満足いく結果と心の底からの自信が持てないのは、深々と底冷えする井戸の底に沈殿している気分です。

自尊心が強く、才能を信じている彼にとっては、鳴かず飛ばずの人生は耐え難い苦痛の連続だったのでしょう。

物語を強く印象つける構図の美しさは特筆に値します。客観性を重要視するため、薄くなりやすい、登場人物の喜怒哀楽の度合いを、補うようにキャメラが表情豊かに場面を切り取る。

このような撮り方をする演出は絵作りの才がはっきり現れます。空回りする作品が多い中、この映画では見事なまの美しさと存在感を放っています。

主人公のレイ・クロック。ビジネス書の成功哲学関係では、とても有名です。彼自身の自伝もありますし、52歳から諦めず成功を掴んだ彼を褒め、成功の秘訣をまとめた本もたくさん出ています。

そして、全て学び成功への正しい歩みをするように語ります。

しかし、映画の中で語られます。己の心を黒く染めてまでも人は成功を手に入れることはしません。成功という目的に対し、他の全てを捨て去る価値を選択しない。

マクドナルドの兄が語ります。そんなことは出来ないと。

成功をだれしも得たい。しかし、おのれの心に背くことはそれ以上したくないこと。だからこそ、人は自ら成功にたどり着かない。

成功の意味を考えさせられる映画でした。







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