凡庸”映画”雑記「シン・ウルトラマン」

シン・ウルトラマンを観た。

どんなもんだろうかと、迷っていたらいつの間にか映画館での上演が終っていた。

思いの外評判が良く、観ても損はしないかも?と気持が傾むきかけたが、すでに時遅し、映画館からも、僕の気持ちからも消えてしまった。

それが、アマゾンプライムビデオでこの間から配信。さっきまで、映画館で上映されていたのに、恐るべし。

このご褒美を食べなんて考えられない。早速、喜び勇んで鑑賞してみた。

感想はというと、正直、あっけないほど”面白かった”。

これ以上でも以下でもない、もちろんいい意味で。

これは観ることに価値があるウルトラマン好きのための記念品みたいな作品だから、多少、あれこれあっても手放しで拍手喝采を送らねばならないだろうなぁと、ある種の覚悟をしていた。

なんたって、庵野秀明が手を出しているとは言っても、シン・ゴジラみたくガッツリ監督までやっておらず、確か脚本と何か総合担当だけだったと思う。

この作品の監督は、樋口真嗣。正直彼の監督の作品で良い思いになったことはない。

アクションや特撮はオタク気質のこだわりで、意外と醍醐味のある演出が楽しめるのだけど、映画全体の演技演出やストーリーの組み立てはどうも散漫で締まりがなく気に入らなかった。

だから、怪獣や宇宙人とウルトラマンの戦いの様子、特撮やアクションはそれなりに楽しめるとは思うが、映画全体の物語性はしっかり目をつぶる必要があるだろう。そう、悪い覚悟をしていた。

事実かどうかは不明だが、樋口監督はとても人好きをする”良い人”らしく、あらゆる人の意見や欲求を満たそうとして、物語が四方八方飛び散り収取がつかなくなると聞く。事実、今まで観てきた作品は、地に足がしっかり着いていない、真っ直ぐとした心棒が立っていない。そんな気がしてもどかしかった。

それが、今回の作品、全くなくなったとは言わないけど、観ていてセリフ、ストーリー、演出が素直に整えられ、余計な迷走が無く、とても観やすい作品になっていた。

陰で君臨する庵野秀明が、余計な雑音に樋口監督がなびかないようにしたのだろうか。憶測だが、庵野秀明の脚本が物語の基軸制御装置として重要な機能を果たした気がする。

アラを探せばキリがない作品だけど、ざっと観る分にはとても楽しめた。初めにも書いたけど、あれこれ手を出して話がまとまらないなんてことがなく、樋口監督には珍しく、とても良い塩梅ですっきりと欲の無い物語になっており、それが、僕はとても気に入った。

観終わって、やっぱり映画館で観た方が良かった。きっと、嫌な気分で映画館を出る悲劇は無かっただろうと素直に思った。後の祭りだけど。

普通の特撮好き、普通の怪獣好き、普通のSF好き、普通のウルトラマン好きのための、普通に肩が凝らない普通に面白い希少な映画。

普通は日本人ならばほとんどが思い入れのある作品だから、余計な力みを入れた雑多な作品になるはずなのに。これだけ普通に作るとは、今振り返ると、恐ろしささえも感じてしまう。もちろんいい意味と敬意を込めて。

ちなみに、役者の演技や、細かな演出などなどは、ガチで批評心で観ては楽しみが激減するから、そこはお約束でぼんやりと楽しんだ方がいいのかも。でも、山本耕史のメトロン星人は愉快で楽しかったので、じっくり演技を堪能しても損は無いかもしれないかも。

↓人気ブログランキングに登録しています。記事がよかったらクリックをお願いいたします。


人気ブログランキングへ