この男の物語をしようと思う。

この男自分のことは人並み外れた才能と力を持っていると思っている。しかしながら、その実人並み以下の才能と力、そして運しか持ち合わせていない。

何をしても、身につくのが遅い。人が数日で身につくことを延々と続けている。それでも、なかなか身につかない。物覚えが悪いのか、勉強の方法がお粗末なのか、とにかく、人の後塵を拝している。

それでいて、自分は人よりも早く、確実に物事が身につくと、考えている。

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自分の理想的な姿と、現実の牛歩ような成長がこれほど乖離している人間も珍しい。それを、本人もようやく薄々気がついているようで、人生を半ば諦めている。

物覚えが遅く、何に付けても人並み以下しかできないならば、そういう生き方をすればいい。自分の無能を理解して、人に対し、自分に対し偉ぶることも無く、淡々と時間をかけ、一つ一つを達成していくしかない。

それが、唯一の正しい生き方だ。

この男そうは感じながらも、なかなかできない。こんな考えが、自分は偉大な天才だと、人並み外れ処理能力と理解力が満ち、他人は自分の足下にいると、こころのどこかで、確かに息づいている。

しかし、何がどうしたって、うまくいかない。

山のようにあれこれ書籍を買ってはみるが、一向に理解できず。途中で自分に幻滅して、それから逃げてしまう。学ぶ忍耐と、そこから生まれる喜びを知らずに逃げている。

この間も、趣味の写真(もちろん趣味という気楽な楽しい物では無く、男は人知れず自分の才能の発揮される方法だと、写真を信じている。高邁に。)そのための現像方法を学ぶために大枚をはたいて、本を買った。

が、未だにまともに読んでいない。

いつか読もうと、それに、自分が一度本を開けば瞬く間に内容が頭の中に入ってくる。そして、完璧な現像方法が身につく。ものの、数日で。しかしだ、そんなことは全くなく、一ページ読み進むのさえ苦労している有様だ。

一つの項目を理解するために、丹念に読もうとするが、一向に頭に入ってこない。眼を開いて、じりじりと眉間にしわを寄せて内容を読んでいると、一ページを終える頃には、精根が尽き果てる。

こんな具合だから、一向に進まず、最近では本を開くのが恐怖に近い。

これだけ、焦り、絶望するのは、理想とする自分ではすいすいといとも簡単に、理解しているのに、現実では数行理解するにも、四苦八苦している低脳な自分がいるからだ。

理解に人一倍時間がかかるならば、それを理解して、納得し受け入れて、毎日少しずつでも読み進めばいい。別に他人との競争ではないのだ。最終的に自分が身につけられればいい。結果、素晴らしい写真が生まれれば、それに対して人は感動するだけであり、生み出した時間や、姿は関係ない。

正論として、こう考える。でも、この男はこの正論を、正論として、正しい行動に変えられるだろうか。いささか絶望的な気もする。









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