「イースドサイド寿司」予想外のおもろい映画と出会った。
いや〜おもろい映画観てしまいました。
Amazonプライム・ビデオでなんかおもろいもんはないかなと観ていたら「イースドサイド寿司」なるヘンテコな名前の映画を見つけました。
紹介写真には寿司職人の格好をした女性が、お箸で巻き寿司をつまんで立っている。
こりゃまた、寿司ブームに乗って作られた、目も当てられない破茶滅茶映画に違いない。それにしては、星印が多い。コメントも悪くない。怖いもの見たさもあって、見始めたら止まらなくなってしまいました。
映画が始まると、メキシコ系の女性、それもシングルマザー。お父さんといっしょに生きるために必死に働いています。屋台を引いたり、スポーツジムで掃除をしたり、できる限りお金を稼ごうと必死。
そんな努力もむなしく、強盗に会い有り金全部取られてしまいます。
底辺で働く南米系移民の苦しい現状がドキュメンタリーのように描かれて行く。いったい何の映画を観ているのだと、驚きつつも、演出の手腕に魅了されてしまいました。
料理人になりたかった彼女。何気なく歩いていたら従業員募集の張り紙に目が引きつけられた。そこは日本料理店。料理に自信と興味を持っていた彼女はドアを叩いたのです。
皿洗いなど調理場の雑用、繁盛している店なので猫の手も借りたいほどの忙しさ、板前長から試しに野菜を切ってみてと言われ、やってみると手際がいい。それから、あれもこれもと店の仕込みを手伝うことになって行きます。
それから、ますます寿司に魅了されて、自分でも寿司を握りたい。その一念で家に帰ってから、寿司の訓練を始めます。
十分自信がついた時、忙しい店を助けるために、料理長に寿司を握らせて欲しいと頼む彼女。女性が握ることに戸惑っていたが、あんまりにも忙しいので、人目のつかないところで握らせてもらい、速さと確かさを認めてもらいます。
しかし、店のオーナーは日本の職人。女性が寿司を握ることを絶対許さない。そのことで大喧嘩して店を辞めてしまいます。ここから、どうなるのかこれは見てのお楽しみ。
アメリカが抱える移民と貧困。それに多民族国家としての姿を織り交ぜた、社会派の重いテーマを、しっかりと抱えつつ、爽快なサクセスストーリーとして、成立させています。
低予算映画ですが、それを感じさせない良さがあります。
低予算を感じさせなかったことの一つは、俳優たちの演技があります。
主人公の女性の演技もとても自然で素晴らしかった。生活苦からいつも下を向いて苦々しい表情をしているのですが、その表情だけで底辺に置かれている同じ境遇の人々の生活を表しています。
それに、特別な美人ではないのに、とても真剣でどことなく愛嬌のある表情にとても引きつけられました。まったくの無名なのにこれだけ演技ができる人がいるというのは、アメリカの俳優の幅を感じます。
日本の俳優も負けていませんでした。サブ主人公と言える料理長を演じているのが日本人の竹内豊さん。あんまり知らない俳優ですが、とても素晴らしい演技をしていました。
どことなく飄々として、職人らしい寡黙さを持ち、良いところを素直に認め、積極的に手助けしていく優しさがある。そんな料理長を演じ切っていました。こんないい俳優がいただなんて驚きですし、もったいなさを感じました。
主人公のお父さん役の人も良かったし、子役も素晴らしかった。俳優の演技だけでも見る価値が大ありです。
観ていて改めて思ったのですが、アメリカは多民族の国家だと。日本料理店といっても、日本人はほとんどおらず、板前も韓国人だったり、スタッフは中国人やヒスパニック。日本料理だからといって、日本人だけではなく、あらゆる民族が働いています。
こんなアメリカの世相も見られて、とても楽しませてくれた良い映画でした。